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顎変形症・外科矯正

顎変形症・保険適用の条件と、顎変形症を矯正のみで治す場合

2025年3月20日

顎変形症とは、基本的には上顎骨と下顎骨の位置関係が著しくズレている状態のことをいいます。
それでは、顎変形症を手術なしで矯正治療だけで治療する場合や、顔貌骨格の問題をオトガイ形成のみで治療する場合に健康保険は使えるのでしょうか?

顎変形症とは?

顎変形症とは、上顎(上顎骨)と下顎(下顎骨)の位置関係が骨格的に大きくずれている状態のことをいいます。
多くのウエブサイトでそのように説明されていますが、健康保険上でいう顎変形症ということになると多少意味合いが異なります。
健康保険の適用条件としての顎変形症とは「上顎骨と下顎骨の位置関係が骨格的に大きくずれているために矯正治療による歯の移動だけでは咬合状態の改善が見込まれないため、矯正治療に顎骨の手術併用が必要な不正咬合」のことをいいます。

顎変形症の矯正治療が健康保険適用となる条件

顎変形症の外科矯正治療が健康保険適応となる条件は、大まかに下記の通りです。
1. 美容目的の手術ではないこと
 噛み合わせを治すための矯正治療に顎骨の手術併用が必要と診断されたうえで、実際に手術併用で矯正治療が行われること
2. 術前矯正→手術→術後矯正→保定、の順番で治療が行われること
3. 顎口腔機能診断施設の指定を受けた医療施設で矯正治療を行うこと
4. 自費診療と混合して治療を行わないこと。
 >使用する矯正装置や材料は、厚生労働省の定める特定保険医療材料のみを使用すること
 >健康保険適用に定められた手順・順序の範囲内で治療を行うこと

顎変形症の治療が健康保険の適応にならない事例

広義には顎変形症の状態であっても、実際の矯正治療は手術なしで行う場合

健康保険上の「顎変形症」とは「きちんと矯正治療をするには顎骨の手術併用が必要なもの」を指しています。
つまり、手術なしで矯正治療をおこなう=手術の必要がない矯正治療ということになるため、月k等・顔貌に非対称や上顎前突、下顎前突などの症状がみとめられたとしても健康保険の適用にはなりません。

サージェリーファースト

健康保険適用での外科矯正治療では、手術の前後に矯正治療をすること、と規定されていため、サージェリーファーストは健康保険の適用にはなりません。

アライナー矯正など特定保険医療材料以外を使用した治療を行う場合

アライナーや一部の舌側矯正などの審美的矯正装置は、厚生労働省の定める特定保険医療材料に認められていないので、これらを使用した場合健康保険の適用はできません。また日本の健康保険制度では混合診療の禁止という規則があり、治療の中の一部に健康保険適用できない治療が含まれた場合、治療全体に健康保険が適用できないことになっています。そのため、例えばアライナー矯正で外科矯正治療をした場合、矯正治療だけでなく入院手術も健康保険が適応できず、外科矯正治療全体が自費診療となるという点に注意が必要です。

単独で行われるオトガイ形成術

オトガイ形成術自体は、噛み合わせと関係がない美容・審美が目的の手術です。
そのため、単独で行われるオトガイ形成術は健康保険適用での顎変形症の外科矯正の対象にはなりません。
ただし例外的に、健康保険適用の顎変形症の顎切り術と一連でおこなわれるオトガイ形成術は健康保険の適用が可能です。
しかし、きちんと噛み合わせを合わせる手術を行った時点でオトガイを含めた顔貌全体のバランスは相当に改善されるます。そのため顎変形症で顎切り術を行った上でさらにオトガイ形成も行う必要があったケースは、割合としてはとても少ないのが実際です。
顔貌骨格と噛み合わせのバランスは関連しています。顎変形症の外科矯正では噛み合わせと顔貌骨格のバランスが連動して変化するものなので、オトガイ形成などを検討する場合には最初に、顔貌骨格と噛み合わせの両方を治す必要がある状況下どうかを把握したうえで、噛み合わせには手術をするほどのずれがなく単純に顔貌のみ変化させたいという場合に単独でのオトガイ形成を検討していくというながれが良いのではないかと矯正医の立場から個人的には思います。

外科矯正の健康保険適用には、顎口腔機能診断施設のクリニックでの治療が必要

顎変形症の外科矯正治療は健康保険適用が可能ですが、どの矯正歯科でもできるわけではありません。
厚生大臣が定める施設基準に適合していると都道府県知事が認める保険医療機関、すなわち【顎口腔機能診断施設】で矯正治療をおこなう必要があります。
口腔機能診断施設の指定を受けるには、矯正歯科医として大学病院の矯正歯科に5年間以上常勤で勤務し、先天性疾患や顎変形症の矯正治療経験等が必要とされています。

まとめ:健康保険適用で顎変形症の治療をするには

・顎口腔機能診断施設で矯正治療をおこなう
・一連の治療として顎切りの手術もおこなう
・手術の前後に矯正治療が必要。サージェリーファーストは適用外
・特定保険医療材料を用いるなど、定められた範囲で治療をおこなう。アライナー矯正などは適用外
・非外科での矯正治療や、オトガイ形成単独の手術などは保険適用外

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