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子供の矯正 矯正の治療方針 矯正治療全般

タイプ別 子供の矯正・不正咬合の種類と治療方法(2)

2019年4月14日

タイプ別 子供の矯正・不正咬合の種類と治療方法(1)】では、横顔のバランスに関連の深い上顎前突と下顎前突の子供の矯正について解説しました。
本ページはひきつづき【タイプ別 子供の矯正・不正咬合の種類と治療方法(2)】として前歯の噛み合わせの深さにかかわる不正咬合、過蓋咬合と開咬について説明します。
歯並びのでこぼこや空隙歯列など、歯列のスペースに関わる不正咬合については、この次の【タイプ別 子供の矯正・不正咬合の種類と治療方法(3)】で解説します。

噛み合わせの「深さ」は適度なことが重要

前歯の噛み合わせの深さは、見た目の問題はもちろん、食べ物を噛みちぎったり、また発音(サ行など)にも大きく関わっています。かみあわせの深さには、歯並びの問題だけでなく顔面骨格のバランス、ぜつなどの習癖、咀嚼に関わる筋肉の強さなどといったことが関わっています。そのため矯正治療で変化させたり、矯正で治療した後の状態を維持することの難易度も高いことがあります。
歯列矯正で歯を詳細に動かして歯並びやかみ合わせを治せるのは、概ね中学生以降の永久歯列が完成した後になりますが、小学生ごろの早期の成長期からアプローチし症状をやわらげたり、根本的な要因を解消しておくことで、将来の歯並びや噛み合わせの改善・安定に役立ちます。

過蓋咬合(前歯の噛み合わせが深すぎる)

前歯の噛み合わせの深さは2~3mm程度が標準的で、これよりも極端に深い噛み合わせは「過蓋咬合」という不正咬合に分類されます。
過蓋咬合自体は単独での不正咬合というよりは、前後的な不正咬合(出っ歯や反対咬合)などを伴っていることが多く、噛み合わせが深いために顎の前後左右の動きを規制し顎関節の負担となっている場合もあります。
そもそも前歯の前後関係が適正だと噛み合わせの深さも適正範囲であることが多く、成長期の過蓋咬合を伴う上顎前突では、噛み合わせの深さが下顎の前方成長力を阻害している可能性もあり、バイトジャンピングアプライアンスやバイオネーター、アクチバトールなど下顎骨の成長促進により上顎前突を治す矯正装置では、同時に噛み合わせを浅くする作用も伴っています。
過蓋咬合を放置すると、極端に歯がすり減ってしまったり(咬耗したり)、また将来歯列矯正を行う際に噛み合わせの深い部分では装着した矯正装置が干渉しやすく苦労したりするので、総合的な診断のもと、早期から解消・軽減しておくことが大切です。

開咬(奥歯が噛んでいるのに上下の前歯があいていて噛めない)

逆に、奥歯で噛んだ時に前歯がかめない状態を「開咬」といいます。(開口ではなく開咬といいます)
開咬の原因にも主に顎顔面の骨格バランスによるものと、主に歯並びによるものがあります。
いずれも上下の前歯の間の隙間を舌で塞ぐ癖がついてしまい、この舌が開咬の状態でかみあわせを安定させる要因にもなってしまうという悪循環を生じます。骨格性の要因が著しい開咬では、成長終了後の歯列矯正の際に外科矯正が必要となる可能性もあり、開咬の要因となる舌の癖などは早期から解消するよう努める必要があります。

・骨格性と歯性の大まかな見分け方
大臼歯のみが噛んでいて、前歯だけでなく小臼歯も開咬となっている場合は骨格性で、不正咬合としてはより重度です。歯性の場合、小臼歯までは噛み合っていて、前歯〜犬歯あたりの前方だけが開咬となっています。

・子供の時期の開咬の対処方法
普段の安静時の舌の位置が低く(低位舌といいます)や、嚥下(ものを飲み込む動作)の際に舌が前歯を後ろから押し出すような動作(舌突出癖といいます)などがあると、前歯を後ろから押し出す動きとなり、結果的に噛み合わせが浅くなり開咬の要因になります。また、開咬になっている上下の前歯の間に舌を挟む癖になりやすく、このような舌の働きが開咬の原因になり、同時に開咬の噛み合わせが舌癖の原因になるという悪循環を生じています。したがって、舌の位置や動きを正常にして歯並びと噛み合わせへの悪影響にならないように、舌の悪習癖を解消して悪循環をたちきることが重要になります。
舌など口腔周囲の筋肉の働き・習慣を正常化するトレーニングを「筋機能訓練(MFT)」といいます。MFT を通じて正しい口腔周囲筋の働きを習慣づけることにより舌の前歯に対する悪影響が排除されると(歯性のばあいはとくに)自然と開咬が緩和され、開咬が緩和されれば舌癖も解消しやすくなるという、プラスの循環をつくっていくことが理想的です。しかしながら、そうそう短期的に習慣を変えられない場合も多く、前歯に舌が物理的に接触できないようにする「タングクリブ」「クリブプレート」といった矯正装置を併用する場合もあります。
タングクリブの使用により舌が歯を押さなくなり開咬が緩解してきたとして、この間に舌の習慣そのものが変化しなければ、矯正装置の使用をやめると再び悪循環が再発することになるので、MFTで正しい口腔周囲筋の使い方を習慣づけることがやはり根本的に重要です。

まとめ

噛み合わせの深さの問題(垂直的な問題)の解決は矯正治療の中でもむずかしい問題です。この問題に歯列矯正で対処するには、歯列矯正自体が可能になるのが永久歯列の完成する中学生ごろ以降となりますが、垂直的な問題自体が矯正治療そのものを難しくしてしまうので、これも早期からの対応が大切です。
過蓋咬合・開咬のいずれも、対応の方法は異なるものの顎顔面の成長力の活発な成長期を利用して、よりよい成長発育となるように誘導していくことが不正咬合を軽減し、将来の歯列矯正をスムーズで良好な結果に誘導するものになりますので、早期からの原因に応じた適切な対応が大切です。
前歯がかみあっておらずいつも舌が見えている(開咬)、逆に、下顎前歯があまり見えないほど噛み合わせが深いなどの傾向がある場合、小学校低学年ごろにはいちど矯正歯科に相談するとよいでしょう。

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