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子供の矯正 矯正の治療方針

歯の生え変わり、顎の成長発育と矯正治療の時期

永久歯がすべて生えそろい、永久歯列が完成となるのが13~14歳ごろです。また顎の骨は、上顎骨の成長発育が10歳ごろで終了するのに対し、下顎骨は身長が伸びている間いっしょに成長発育が続きます。そのため顔貌骨格は女子で高校生ごろ、男子で大学生ごろまでは成長発育による変化があるので、不正咬合の状況により顎骨の成長発育も考慮して矯正治療を行う必要があります。

子供の頃から矯正治療を開始する意義

単純な年数で考えれば当然、永久歯列が完成した後の人生の方がそれまでよりもとても長いものになるので、矯正治療のゴールも、永久歯の歯並びや噛み合わせを完成させるということが目標になります。そのため、永久歯が生えそろった以降の永久歯列機に行う歯列矯正が重要になる場合がほとんどです。
一方で、永久歯への生え変わりや顎の成長発育の時期は、その後の永久歯での歯並びや噛み合わせをかたちづくる大切な時期となり、この時期つまり小児期から成長発育段階に応じて適切な矯正治療を開始しておくことは将来の矯正治療や永久歯列にプラスにはたらくため、成長期である子供の頃からの矯正治療が理想的となります。
ただし、旺盛な成長発育の終了後に実際にどのような顔貌骨格の大きさ、形、バランス、永久歯列の歯並びと噛み合わせになっているかを精密に予測することはできません。そのため成長期の矯正治療では、もしかしたら裏目になってしまうリスクの高い内容は避けるようにすることも大切です。
あくまで最終目標は永久歯列の歯並びと噛み合わせなので、無理に子供のうちに完結させようとせず、成長発育段階に合わせた適切な時期に適切な内容の矯正治療」とすることが大切です。
このページでは、矯正治療とかかわる歯の生え変わりや顎の成長の時期について解説します。

乳歯列の完成:2歳半

乳歯がすべて生え揃うのが概ね2歳半ごろです。
歯の本数は、上下左右それぞれ前歯が2本、犬歯が1本、臼歯が2本で5本ずつ、上下左右全体で20本になります。
ちなみに、将来生えてくる6歳臼歯(=第一大臼歯)は乳歯列のさらに後ろに生えてきます。

この時期から積極的に咬合誘導治療を行う小児歯科などもみられますが、子供の心理的な成長発育がまだ幼いこともあり、3歳ごろにはまだ歯型をとったり矯正装置を使ったりということはなかなか難しいことも多いため、矯正治療を開始するのはもう少し後とすることが多いように思われます。
ただし小児の反対咬合(受け口)の場合には、骨格的な下顎前突に成長していく可能性を少しでも下げるために早めの治療開始が有効な場合があります。歯形の採得などが不要な小児用の既製品の矯正装置なども利用できることから、反対咬合の場合は5歳前後には矯正歯科に相談されると良いでしょう。

永久歯の萌出開始:小学校1年生ごろ

6歳ごろになると、下顎の第一大臼歯(=6歳臼歯)などが生え始めます。
第一大臼歯は、乳歯列の最後方臼歯の後ろ、真ん中から数えて通常6番目の場所に萌出します。6歳ごろから生え始めることが多いので6歳臼歯という俗称でも呼ばれます。
ほぼ同時期に乳歯の前歯が抜け始め、永久歯の前歯が生え始めます。
概ね小学校2年生ぐらいまでのあいだに6歳臼歯と前歯が、大抵の場合、下顎→上顎、第一大臼歯→前歯の順で永久歯に生え変わっていきます。

上顎の4前歯が生えてきた頃には、不正咬合の状況(でこぼこ、すきま、出っ歯、受け口、開咬、過蓋咬合など)がかなり把握できるようになり、矯正治療が開始可能な場合が増えてきます。またその後の歯の生え変わりや成長発育によってその時期に可能な矯正治療内容も変化していくため、適切な時期を逃さず矯正治療をできるように「上顎の4前歯が永久歯になった頃」には矯正歯科を受診し、将来的な内容やタイミングまで含めて相談されるのがおすすめです。

上顎骨の成長発育:10歳ごろまで

顎顔面の成長発育は【頭蓋〜上顎骨〜下顎骨】の順で完成していきます。
上顎の歯列の土台となる上顎骨は、概ね10歳ごろには成長終了します。

骨格性の下顎前突で上顎骨の成長促進が必要な場合には、上顎骨の成長力が豊かなうちに行う必要があります。
この後の身長の増大期(思春期成長)に下顎骨が成長する時期が(I上顎に遅れて後から)来るため、骨格性の下顎前突は成長期の後半に症状が強まることを想定してこの時期の治療を検討することが大切です。
また上顎骨の前方成長促進という治療自体に10ヶ月以上の期間が必要なことが多いため、反対咬合や下顎前突などが気になる場合には、遅くとも9歳になる前には矯正歯科に相談をし、必要に応じて治療開始をしておく必要があります。

混合歯列期:小学校低学年〜小学校6年生ごろ

第一大臼歯と前歯4本が永久歯になると、しばらくの間あまり歯の生え変わりがなく、一時的に比較的安定した歯並びの時期になります。歯列最後方の大臼歯と前歯が永久歯、中間の3本が乳歯で、永久歯と乳歯が混在している時期のため「混合歯列期」といいます。
歯列の側方拡大や、永久歯の部分だけ部分的にマルチブラケット装置を装着したセクショナルアーチ、そのほかにも上顎骨や下顎骨などの成長促進など、また混合歯列期も終盤となりそろそろ乳歯が抜ける頃になると、乳歯の抜けたスペースを次の永久歯のために確保しておく「保隙」など、それぞれの患者さんの不正咬合と成長発育の時期にあわせて様々な矯正装置が用いられる時期になります。
それぞれの不正咬合の種類と成長発育段階、歯の生え変わりのタイミングなど患者さんの父性咬合の状況によって使用する矯正装置や治療方針が異なるため、矯正治療のバリエーションの多い時期となります。

下顎骨の成長時期=身長の増大期

身長が伸びている間は下顎骨も成長します。
最も身長が伸びる思春期成長期とともに下顎骨も成長するため、女子は小学校高学年から中学生にかけて、男子は中学生から高校生にかけてが最も成長する時期となります。
女子では概ね高校生ごろまでに、男子では20歳ごろまでに成長終了します。

下顎骨は、上顎骨の成長発育が終了した後に大きく成長するため、骨格性下顎前突の場合は中高生ごろに前歯の反対咬合や骨格性下顎前突の横顔のバランスが強まってくることとなります。
特に骨格性下顎前突の傾向が強い場合、最終的な歯列矯正を行う際に顎骨の手術併用が必要となる場合があります。
このような不正咬合を「顎変形症」、手術を併用した歯列矯正を「外科矯正」といいますが、手術なしで歯列矯正を行う場合と外科矯正の場合とで抜歯の必要性が異なったりする場合もあるので、外科矯正となる可能性が窺われる場合には最終的な歯列矯正の治療方針は、十分に成長発育が終了してから判断をする必要があります。
逆に、骨格性上顎前突で下顎骨の成長促進が必要な場合には、身長の成長旺盛な時期=下顎骨の成長も旺盛なこの時期におこなうと効果的なことがあり、歯列の状況などにあわせて下顎骨成長促進をおこなうための矯正装置が選択されます。

永久歯列の完成

上下左右の第二大臼歯まで永久歯が生え揃い、永久歯列の完成となります。年齢的には概ね中学生ごろです。歯の本数は上下左右それぞれ7本(前歯が2本、犬歯が1本、小臼歯が2本、大臼歯が2本)、上下左右の合計が28本です。
矯正治療は最終的に永久歯列期の歯列矯正をおこなって終了となります。最後方の第二大臼歯まで治療対象にきちんと含める必要があるので、とくに理由がない限り、第二大臼歯が矯正治療が可能な程度には萌出してから最終的な歯列矯正を開始するのが理想的です。
小学生ごろの子供時代の矯正治療とは、最終的な歯列矯正が開始できる時期を待ちながら少しづつ準備をすすめる治療、永久歯列の歯列矯正が最終的に歯並びや噛み合わせを治して完成させる時期となります。

まとめ

子供の頃から成長期を通じての矯正治療は、「乳歯から永久歯への歯の生え変わり」と、「上顎骨、下顎骨の成長時期」を考慮しておこなう必要があります。一見同じように感じられる不正咬合でも、患者さんによって成長発育のタイミングが異なったり、歯が生え変わる時期も異なるため、適切な矯正治療の内容がかわってきます。
それぞれ個人差のある要因なので、実際に矯正歯科を受診のうえ、患者さんにあわせた矯正治療を考えてもらうことが大切です。

・矯正治療は、成長期全体を通じて適切な時期に適切な内容を
・上顎の4前歯が永久歯になった頃には、いちど矯正歯科に相談を
・幼児期の反対咬合に気が付いたら小学校就学前には矯正歯科に相談を
・最終的な歯列矯正は第二大臼歯が生えて永久歯列が完成した後に開始
・骨格性の下顎前突の場合、下顎骨の成長時期を念頭に

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