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矯正治療全般

矯正治療の初診相談、何軒までが普通だろうか?

矯正治療をする歯科医院を実際に選ぶために幾つかの矯正歯科を比較検討したいと思うのは患者さんとしては当然のことだと思います。
巷では「矯正歯科を決めるには少なくとも3軒以上初診するべき」といった都市伝説?もあるようですが、矯正治療を引き受ける矯正歯科としては無闇に複数の矯正歯科を初診するというのは必ずしも賛成できる意見ではありません。
自分にとって最良の矯正歯科を選びたいという患者さんの心情は理解しているとはいえ、比較や情報収集のためだけの初診は矯正歯科にとって負担となり疲弊して行きますし、患者さんにとってもある程度以上多くの初診相談を繰り返しても得られる情報はそれほど増えないと思われることがその理由です。

複数の矯正歯科を比較した方が良い理由

「歯科治療における矯正治療の基本的な考え方」というものがありますので、きちんと矯正治療を習得した歯科医師であれば、それほど大きく意見が異なることはありません。
しかしそれでも、矯正歯科によって多少なりとも矯正治療方針に対する考え方には幅があります。またクリニックにより利便や雰囲気、自費診療となる矯正治療の治療費用も異なりますので、自分自身の希望や想定と異なる場合には他の矯正歯科を初診することが必要となります。
また最近では、「歯科矯正歯科」と標榜していてもインビザラインなどのアライナー矯正しか対応していないといったクリニックも散見され、患者さんにとってわかりにくい状況となっています。患者さんの不正咬合がアライナー矯正のみでは対応しきれないケースなどもあり、初診する矯正歯科の選定の段階で、自分の不正咬合の治療に適切なクリニックを選ぶようにすることで、初診する矯正歯科の数をあまり増やさずにすむかもしれません。

初診を繰り返すこと・ドクターショッピングのデメリット

矯正歯科の立場から考える最大のデメリットは「初診では治療方針を確定できない」にもかかわらず、多数の矯正歯科を初診してもある程度以上の情報は得られない、ということです。もちろん初診の段階でできるだけ見当をつけて説明するように心がけるのですが、検査をしてみると想定外の状況のこともあり、初診での第一印象で判断をしてしまうと治療方針を誤ってしまう可能性が高まります。
患者さんによって比較検討されたい内容は異なりますが、例えば「抜歯が必要かどうか」「アライナー矯正で適切かどうか」「外科矯正の方針になるかどうか」など治療方針に関わる肝心なことはは検査診断を行わなければ確定できません。治療方針が定まらなければ治療費用なども決定できない場合もあり、ある程度以上初診を繰り返しても、患者さんにとっても結局時間の浪費になってしまうように感じます。
そのため、矯正歯科の雰囲気や利便、信頼感などに問題がなければ、検査診断を受けてきちんとした治療方針の確認に進めることが矯正治療をご希望される患者さんにとって(やたらと多くの初診を繰り返すよりも)建設的なことなのではないかと思います。
どうしても要望に合う矯正歯科が見つからないとドクターショッピングに陥りがちになってしまう場合もあります。そのような場合には初診で経緯をしっかりと話してもらうことも重要になるし、それでも、それ以上初診を繰り返しても結論が出ない可能性もあるため、ご自身の矯正治療に対する要望が歯科治療として合理的なものかどうかを確認する意味で、費用はかかりますが歯科大学病院の強制科などでの検査診断を受診されてみるとよいかもしれません。
余談ですが、他の矯正歯科での治療方針や治療費のお話など、他施設での説明や治療内容については、その先生がそのような説明をされた背景を十分に把握しないまま私見を述べますととんでもない齟齬を生じてしまう可能性があるため、歯科医師としては肯定も否定もできません。そのため、他医院での説明や診断の答え合わせに、他の矯正歯科を初診されて他としても何もコメントできることがないのが普通ですので、本来の目的で初診を受診いただくことが最善と思われます。

信頼を培える矯正歯科で矯正治療を

矯正治療を受けるうえで、担当医の技術ということがなにより気になるポイントかと思いますが、矯正治療に限らず医療というものは確実に100%の結果を約束できるものではありません。患者さんの個人差も大きいこともあり、最大限努力した上でどうしても結果論になってしまうところがあるものです。
そうすると何を以て矯正歯科を選ぶのかということになるのですが、詰まるところ信頼感を培える矯正歯科であるかどうかというところに尽きるのではないかと思います。
長期にわたる矯正治療ではさまざまなことがあり得ます。初診というのは、矯正歯科の概要を知ってもらって矯正治療を始めるかどうかを患者さんに検討していただく機会ということになりますが、そういった治療を始めるにあたって、信頼感というのは、患者さんから矯正歯科に一方通行的なものではなく、矯正歯科から患者さんということも含めた双方向のものであると思いますし、双方向の信頼感が治療成功の一つの秘訣だと思います。
できれば、あまりたくさんの初診をすることなく相性の良い信頼のできる矯正歯科に巡り合えることが最善と、みなさまの矯正治療の成功を願っています。

要約

矯正歯科の選び方
・患者が複数の矯正歯科を比較するのは自然な行動だが、無闇に初診を繰り返すことには限界がある。
・矯正治療方針や治療費、クリニックの雰囲気などは異なるため、最低限の比較は必要だが、適切なクリニックを絞り込むことで初診の回数を減らせる。

初診の限界と初診ばかりを繰り返すデメリット
・初診では検査診断の前段階なので、具体的な治療方針や費用が確定しない。
・多すぎる初診の繰り返しは時間を浪費し、情報収集の効率も下がる。
・矯正歯科の雰囲気や信頼感が良好であれば、早めに検査診断に進む方が建設的。

ドクターショッピングの回避
・複数の初診で矯正歯科が見つからない場合は、大学病院などで検査診断を受けるのも有効。
・他の矯正歯科での意見や診断内容を確認する目的で初診することは、コメントを得られない場合が多い。

信頼感が鍵
・矯正治療は長期に及ぶ医療行為であり、患者と医師の双方向の信頼が治療成功の秘訣。
・多くの初診を重ねるよりも、相性の良い信頼できる矯正歯科を選ぶことが重要。

結論
信頼感を培える矯正歯科に巡り会えたら、そこで速やかに検査診断して治療開始とすることが、成功への近道です。

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