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アライナー矯正・インビザライン 矯正装置

アライナー矯正の動向・2019/Q1現在

2021年3月28日

ブラケットとワイヤーなどの目立つ矯正装置を使用せずに歯列矯正が可能なマウスピース矯正(アライナー矯正)が注目されています。
従来からブラケット装置を使わずに、着脱式の矯正装置で歯列矯正をしようという試み自体は新しいことではありません。しかし着脱式の装置では精密かつ確実に歯を動かすことが困難だったため、いわゆる歯列矯正には力不足なことが多く、小規模な歯の移動や大まかな動きに限定して用いられるものでした。
ところが1997年に設立されたアラインテクノロジー社の「インビザライン」は、CAD/CAM技術を利用し精度の高いマウスピースを製作することにより、着脱式の矯正装置としては革命的に正確な歯の移動を可能とし、これ端を発して現在のアライナー矯正の発展がはじまりました。

インビザラインが他のアライナー矯正と異なる(異なっていた)点

インビザラインが他のマウスピース矯正装置などと比較して画期的だった点は、
・CADの応用により、定量的に変形量を設定したアライナーを製作
・そのため、治療の最初から概ね最後までの一連のアライナーを「一度に全部」製作することが可能
・したがってアライナーを変更する都度、印象採得をやりなおす必要がなくなった
ということですが、インビザラインではとくにアライナーをしっかり歯に引っかけるための突起=「アタッチメント」という機構を考案したことにより、他のマウスピース型矯正装置よりもしっかりと歯を動かせる様になったことで、さまざまなマウスピース型矯正装置の中で、最も実用的なマウスピース型矯正装置としてインビザラインの優位性を保ってきたというのがこれまでの経緯です。

アタッチメントのパテント解放に伴う他社の追随

インビザラインが流行したことで現在では、さまざまなメーカーから、さまざまなマウスピース矯正装置(アライナー矯正装置)が販売されています。
デジタル技術(CAD/CAM)で製作するものから手作業で製作するものまで、現時点でさまざまな製作方法のマウスピース矯正が存在しています。さらにそれぞれアライナーの設計方法、製作方法、材質の選択、アタッチメントの有無、などが異なるため、それぞれのアライナ矯正システムにおいてどの程度の矯正治療結果が見込めるものかも異なることとなります。
アラインテクノロジー社が設立された1997年よりこれまでインビザライン一強の一つの理由であった「アタッチメント」のパテントが昨年より開放され、競合各社も同様の構造を取り入れてくると思われるため、どのようなアライナー矯正製品をどのように用いるかという比較検討が複雑になってくることでしょう。

海外でのアライナー矯正の動向

2019年現在アメリカでのアライナー矯正は矯正治療全体の約6分の1を占めており、アライナー矯正のうち約3分の2を現在インビザラインが占めている現状といわれています。
アライナー矯正の市場規模は現在すでに70兆円規模に達しており、アラインテクノロジー社が保有していた「アタッチメント」のパテントが解放されたことを見越して、Straumann, Sirona, 3Mといった歯科界のCAD/CAMメーカー大手がアライナー矯正に参入してきているというのが現状です。
規制のゆるいアメリカでは、矯正治療の希望者が自分で自分の歯型をとって郵送するとアライナーを返送してくるという基本的に歯科医師が介在しないアライナー矯正サービスもローンチされています。
日本はインビザラインがほぼ独占している状況ですが、シェア第2位のクリアコレクト(Straumann)や、ほかにもシュアスマイルアライナー(Sirona)などといったアライナー治療システムが日本に参入してくるのも近いのではないかと思います。

アライナー矯正の特徴と限界・注意点

・ブラケットとワイヤーを(あまり)用いずに歯を動かせる点が利点
  ・見た目が良い
  ・歯磨きがしやすい
  ・毎日長時間アライナーを装着する必要がある
  ・とくに矯正治療技術を習得していない歯科医師でも歯列矯正が可能
   担当医の技術レベルに左右されにくい
・ブラケットとワイヤーを用いた矯正装置と比較して、現時点ではまだ適応範囲が狭い
・抜歯を要する矯正治療には、(将来的には克服されるかもしれないが)アライナー矯正単独では基本的に困難な現状
・非現実的な治療目標や、無理のある移動量で設計されたアライナーでは十分な治療結果が得られない
・アライナー単独では十分な治療結果が得られなかった際には、ブラケットとワイヤーを用いた矯正装置などでの矯正治療を併用する必要性も。そのためには矯正治療の専門的な技術が必要

アライナー単独での歯列矯正が日本ではいまいち難しい理由

抜歯を併用した歯列矯正は、アライナー矯正単独では困難であるというのが一般的な現状です。
抜歯症例の方が矯正治療としての難度は高いため、必要に応じてブラケット装置を併用するなどの工夫で対応されていますが、単純にアライナー矯正単独で対応できるかというとまだまだ困難な点が多い状況です。
インビザラインが開発されたアメリカでは、抜歯を必要としないケースが7~8割を占めると言われています。
しかし日本をはじめとする黄色人種は、顔面骨格の奥行きが浅いためどうしても抜歯が必要な不正咬合が多く、日本の矯正歯科では抜歯症例の方が6~8割、どんなに少なくみても過半数を占めるという現状といわれています。
歯列矯正においてブラケットを装着しなくて済むということの利点は非常に大きいのですが、日本で矯正治療では、アライナー矯正(単独)での治療が適しているかどうかをきちんと判断した上で採用することが非常に重要です。

アライナー矯正を検討する際の注意点は

マウスピース矯正・アライナー矯正ならではのメリットは多数あります。
しかし現状ではまだ、アライナー矯正に向いている症例、向いていない症例、ということが現実的にあり、抜歯症例の多い日本では、アライナー矯正単独で対応できるケースはまだそれほど多くないと認識しておく必要があります。
アライナー矯正という「道具」の良し悪し、適否という議論もありますが、要は「道具」の使い方如何で良い治療にも悪い治療にもなり得るものです。
矯正治療を提供する歯科医師としても、矯正治療について習熟していなくても矯正治療が行えるし、適切な症例であれば十分な治療結果が見込める点もわざわざ矯正専門の歯科医院を受診しなくても矯正治療が可能となるという利点になります。
しかし実際に矯正治療をする際には、どの様な矯正装置で矯正治療を行うかということ以前に、まずそれぞれの患者さんに適した治療目標の設定をすることが重要で、そのための最低限基本的な手順、すなわち検査と診断は必要です。
さらに、アライナー矯正では十分な治療ができなかった場合にはやはりブラケットとワイヤーでの治療が必要になるというケースも多々ありますので、マルスピース矯正・アライナー矯正であってもある程度の矯正治療の知識と技術を持った歯科医師に治療を受けることが肝要になるかとは思います。

要点

アライナー矯正の普及背景
・技術革新:1997年、インビザラインがCAD/CAM技術を活用し、高精度で効率的なアライナーを開発。
・アタッチメントの導入:歯を動かす突起(アタッチメント)の考案により、従来より精密な治療が可能になった。

治療の利点:
・ブラケットやワイヤーを使わないため、目立たず、取り外し可能。
・清潔を保ちやすく、日常生活に支障が少ない。

競争の激化
・特許の解放:インビザライン独自の技術(アタッチメント)の特許が解放され、他社が追随。
・新規参入:クリアコレクト(Straumann)やシュアスマイル(Sirona)そのほかの競合製品が市場に参入。
・市場の拡大:アメリカでは矯正治療の6分の1をアライナー矯正が占める。日本でも増加傾向。

特徴と限界
・メリット
 見た目や快適さが高評価。
 矯正の専門知識が少ない歯科医でも提供可能。
・限界
 抜歯症例への対応が難しい:日本では抜歯を必要とする患者が6~8割を占めるため、アライナー単独での治療は限定的。
 適応範囲の狭さ:複雑な症例ではブラケット併用が必要。

アライナー矯正を検討する際の注意点
・診断の重要性:検査と診断に基づいて適切な治療目標を設定することが不可欠。
・治療技術の評価:アライナー矯正でも十分な知識と技術を持つ歯科医師の診療を受けることが望ましい。
・適応症例の確認:患者個別の症状に対し、アライナー矯正が適切かを見極める必要がある。

日本市場の課題
・抜歯症例の多さ:顔面骨格の特性から、日本人の多くが抜歯を伴う治療が必要。
・一般歯科の参入:アライナー矯正が専門知識を持たない歯科医師にも提供可能になり、治療の質にばらつきが出る可能性がある。

今後の展望
・競争と多様化:特許解放に伴い、価格や製品選択肢が増加。
・技術進化:CAD/CAMの進歩により、より精度の高い治療が期待される。
・課題解決:抜歯症例への対応や、治療結果の安定性を高める研究開発が進む見込み。

結論
アライナー矯正は、利便性や審美性の高さから注目を集めており利点もあるが、治療には適応症例や限界があるため、信頼できる歯科医の診断を受けることが不可欠です。今後の技術革新と競争により選択肢が増える一方、治療の質を見極める重要性も増しています。

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