顎変形症の外科矯正では、矯正治療をおこなう矯正歯科だけでなく、手術を担当する口腔外科などの受診も必要です。
入院施設の必要な口腔外科などは、大学病院や総合病院の中のひとつの診療科となっていることが多いため、入院以外の通院も平日昼間での通院が必要な場合がほとんどです。
手術の依頼先の病院の体制により、口腔外科を受診する回数も異なります。
外科矯正治療開始前の段階では詳細はまだ定まりませんが、口腔外科関連でもどの程度の通院が必要かなども、治療全体の概要の一つとして掴んでおくことも大切です。
どのようなタイミングで口腔外科や形成外科の受診が必要か
医療施設により、口腔外科への実際の受診の回数やながれは異なりますが、おおまかに下記のタイミングでの受診が必要です。
1. 外科矯正(術前矯正)の開始前。口腔外科などの初診
2. 手術依頼時(術前矯正完了時)
3. 入院前
4. 入院・手術
5. 退院(直)後
6. プレート除去(希望に応じ)
1. 口腔外科の初診
外科矯正を開始する際に、矯正化だけでなく手術を担当する口腔外科の初診も必要です。
矯正歯科と相互に治療方針の確認をしたうえで、将来行う手術の概要、注意事項などについての患者さんへの説明が主な目的です。
総合病院内の口腔外科などでは、初診時の口腔外科受診が1回で済む病院もあります。
大学病院などでは、初診時に担当医を決定した後日、教授診断や矯正科と口腔外科のカンファレンスなど、治療開始まえに3〜4回程度の受診が必要な病院などもあり、医療施設の体制や考え方により受診回数は異なります。
2. 手術依頼時(術前矯正完了時)
術前矯正が完了すると、実際の手術の打ち合わせに入ります。
主な目的は、手術日程の決定と、最終的に具体的な手術の計画を確定することです。
初診と同様、必要な受診回数は病院により異なります。
大学病院など、矯正科と口腔外科の共同でカンファレンスを行う場合などは、この段階でも3~4回の受診が必要な病院もあります。
3. 入院前
入院前には、患者さんのメディカルチェックや、病院によりあらかじめ自己血の貯血などを行いますので、手術にむけての検査関連で1~2回の受診が必要です。
4. 入院・手術
病院により入院期間は様々ですが一般的には手術の1〜2日前の入院し、手術後1週間から10日程度で退院としていることが多いように感じます。
実際に手術後何日程度入院が必要かは、手術の内容や口腔外科の考え方だけでなく、手術後の経過や患者さんの体調などにより異なります。
5. 退院(直)後
退院後2ヶ月程度は、手術をした骨の治癒過程の期間となり骨の状態が不安定です。
手術後の経過観察ため、月に一回程度〜は手術をした口腔外科の受診が必要で、とくに手術の2〜3ヶ月後の段階で「開咬訓練」をきちんと行うことが非常に重要となるため、手術後も必要に応じた口腔外科の受診が重要です。
また、手術終了後の不安定な時期を通じて手術後の噛み合わせを確立していく作業も非常に重要です。
この部分を矯正科と口腔外科のどちらが担当するかなども医療施設により考え方が異なるところですが、手術後約2ヶ月ほどは通常の矯正治療よりも頻繁な通院(概ね1~2週ごと)を必要とすることが多いので、退院後についても病院に通院できる時間を確保しておくことが非常に重要です。
6. プレート除去
手術時に骨の固定に用いいたプレートは、必ずしも除去する必要はありませんが、患者さんの希望があればプレート除去の手術を行います。
手術後の安定を考慮するとあまりに早期のプレート除去は不可能ですが、逆に手術後長期経過するとプレート自体が周囲の骨としっかりと癒合して、プレート除去術が非常に困難になってしまいます。そのためプレート除去を希望される場合には、手術からだいたい1年半前後ぐらいを目処とすることが多いように思います。
プレート除去の手術は入院期間も2泊3日程度で、手術自体も顎切りほど大変ではありません。
顎変形症の外科矯正で口腔外科を受診する頻度はどの程度か
病院や診療科ごとに考え方や体制が様々です。また患者さんごとに治療の経過も異なるため、口腔外科への通院回数を一概にカウントすることはできませんが、長期にわたる顎変形症の外科矯正治療の中で、月1回の矯正歯科以外にも、口腔外科への通院も節目ごとに必要ということは念頭に置いておきましょう。
とくに、口腔外科の先生は「手術日」と「外来診察の日」大学病院であれば「学生教育」などの業務を曜日などでふり分けていることが多いため、必ずしも患者さんの希望の曜日や時間帯に受信ができるとは限らず、病院の都合に合わせて受診をする必要も出てきます。
顎変形症の外科矯正は治療期間が長期にわたるだけでなく、治療内容としてもなかなか大変な部分もあり、一度開始したらきちんと最後までやりとげなければなりません。そのため、患者さんの日常生活の中でどの程度の負担が見込まれるものなのか把握したうえで、矯正歯科にも口腔外科にも通院する時間をきちんと確保することが顎変形症の外科矯正治療を正鵠させるためにとても重要です。