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大人・永久歯列の矯正 矯正治療全般

「私の場合の歯列矯正はいくらですか?」という問い合わせ (1)

2020年9月27日

矯正歯科では、「私の場合の矯正治療費用は具体的にどのくらいか尋ねたい」という問い合わせがあります。
一般的には自費診療となる矯正治療ではもっともな質問のひとつですが、一方現在では、ホームページなどでそれぞれの矯正歯科が相当詳しい情報提供をしています。そのため問い合わせ対応をしている立場としては、「すべてホームページに記載してあるので詳しくはそちらをご覧ください」と回答することも多く問い合わせるまでもない事例も増え、なかには、矯正治療にかかる費用の概算を聞くためだけに初診を受診されているケースも見受けられます。
せっかく矯正歯科の初診をおとずれておきながら、料金の質問だけで終わってしまうのももったいない話です。矯正歯科への問い合わせや矯正初診の受診を、その後の矯正治療に向けて有効に活用するためにも、ホームページから読み取れることは読み取り、初診の受診ではそのうえで実際に矯正歯科を受診して見なければわからないことをしっかりとお話しできると理想的です。
実際に矯正歯科を受診して見なければわからないこと」を書く前に今回は、矯正歯科のホームページに掲載されている矯正治療費を理解しやすくするために【矯正治療の料金体系】ということについて書いてみます。

自費診療の矯正治療料金設定はクリニックごとに異なる

一般的な矯正治療は健康保険が使えず自費診療です

普通の矯正治療は健康保険が使えず自費診療となります。
健康保険が適用できるのは唇顎口蓋裂、ゴールデンハー症候群、トリーチャ・コリンズ症候群など厚生労働大臣のさだめる先天性疾患か、顎変形症の外科矯正を行う場合に限られます。

自費診療での矯正治療費用

矯正歯科に限らず自費診療(自由診療)では、医療機関はそれぞれ独自に料金体系を定める必要があります。矯正治療の場合も、クリニックにより料金体系や支払方法が異なります。
ホームページに料金説明がされている場合には、齟齬を生じにくいように詳細な説明がされており問い合わせをしなくても料金の概要がわかるようになっている場合がほとんどです。
矯正治療の料金が掲載されていない場合は、実際に矯正治療をしている歯科医院かどうかということも含め、「一般的な費用」については問い合わせをしてみると良いでしょう。

健康保険適用の場合の矯正治療費用

健康保険治療は(矯正治療に限らず)治療のすすめかたや治療に用いることができる材料や薬が法令により定められています。矯正歯科は法令で定められた範囲で診療行為をおこない、当日の診療内容に基づいて保険点数=診療報酬を算出します。一般的にはこのうち3割が患者さんの自己負担、残り7割は保険者から医療機関への支払となっています。毎回の際風的な処置内容は診察してみないと決まらないものであるため、事前に正確な治療費用の見積もりは難しい、というのが矯正治療に限らず健康保険治療の費用がいようとなります。また外科矯正の入院手術の際に利用可能な高額療養費制度ですが、自己負担額が世帯年収によって異なるため、入院手術の際の自己負担額は各自が見当をつける必要があるでしょう。

矯正治療費用の内訳を解説します

以降は、一般的な矯正治療である自費診療(自由診療)の場合について書いていきます。

初診相談料

矯正治療は、治療期間が長く、また自費診療での高額治療となりやすいことから、治療のながれや費用についての説明を初回に行うのが普通です。
通常の健康保険治療であれば初診の患者さんには一律に「初診料」として261点(約2600円)を算定することができますが、矯正治療は自費診療なので、それぞれのクリニックで独自に初診相談料を定めています。初診相談に30分〜1時間ほどの時間を確保するクリニックでは、3000円〜6000円程度が一般的なものと思われます。最近では初診相談を集患(集客)の一環と捉え無料相談をおこなうクリニックも増えていますが、矯正医としっかりと話をしたい、ということになるとそれなりの時間を費やすことになりますので、矯正歯科側の負担も大きくなりますので、初診相談でもある程度の費用がかかること自体は本来適切と思います。
※初診相談は、正式な検査や診断を行う前段階ですので、まだ最終的な治療方針を説明できる段階ではない、という点をあらかじめ理解いただいておく必要があります。

検査料・診断料

矯正治療の検査には、基本的に下記検査項目が含まれます。
・口腔内写真
・顔貌写真
・印象採得(じょうげそれぞれ全体の歯型の採取)
・レントゲン撮影(パノラマレントゲンと矯正専用のセファログラム)...など
顔面骨格のバランスや歯の生えている位置や角度を分析するにはセファログラムの分析が必要なため、矯正の検査ではセファログラムの撮影が必須となっています。
近年では印象採得を口腔内スキャナで行なったり、レントゲン撮影全体をCTで代用するなども行われる場合もでてきています。基本的な検査だけでは不足の場合、追加の検査を行う場合もあり、検査項目によっては追加費用がかかります。
これらの検査結果を分析し総合的に判断のうえ、矯正治療の計画を定めることを「診断」といいます。
診断による矯正治療計画確定に伴い、矯正治療費用も確定となります。

検査〜診断にかかる料金もクリニックにより様々ですが、検査と診断の合計で30,000円〜80,000円程度のことが多いようです。参考として、東京医科歯科大学附属歯科病院の矯正検査費用は84,315円、診断料として38,577円(R2.9現在)となっています。

矯正治療の「本体」にかかる費用

矯正治療全体の中で、もっとも費用の大きい部分になります。料金体系がクリニックにより大きく異なる部分でもあります。
矯正治療費用本体の内訳とされるものはおおまかに、
・基本施術料(基本技術料などとも表記される)
・矯正装置費用
・処置料
・治療終了後に用いる保定装置費用
といったものになります。これらの金額や名目をどのように合理的にまとめるかは医療施設により異なる点がややこしいところです。最近では「トータルフィー」などの表記で、全ての金額をまとめて提示するクリニックもみられます。
矯正装置費用や基本施術料などの配分をどのように考えるかは医療施設によって様々ですが、「矯正治療費の総額」は計算してみると(矯正専門のクリニック同士では)一般的に地域ごとに概ね近似しています。

基本施術料(基本技術料)とは?

歯科治療は、歯科材料と技工物だけでは成立せず、適切な技術で歯科医師がこれらを取り扱ってはじめて「治療」として成立するものです。したがって矯正治療費の算出方法も「材料・装置費用+技術料」と理解していただくと良いと思います。

処置料(処置調整料)とは?

「患者さんの処置をおこなう時間と場所を確保し、実際に処置をおこなうこと」に対していただく費用です。処置料は応急処置を除く来院ごとにかかるのが普通ですので、治療回数が多ければ多いほど「処置料の合計金額」は増えることになります。難易度の高いケースほど矯正治療期間が長引く傾向があるため、矯正歯科としては「矯正治療の難易度に対する治療費用の違い」を処置料の回数(=治療回数)で調整しているという考え方もあります。治療の大変さ≒治療の期間に応じて処置料が発生するという点で、本来の合理的な考え方のものです。

トータルフィーとは?

トータルフィーとは、基本施術料(基本技術料)、矯正装置費用、処置料、保定装置費用などをひとまとめにした金額で患者さんに提示・請求する料金体系のことをいいます。
想定される治療期間に応じた処置料などを、あらかじめ治療費総額組み込んでいるとも言えるもので、トータルフィーだからといって安価ということではなく、患者さんにとっては、治療開始時に矯正治療の総額が把握できる点が利便となります。

矯正治療の内容に応じて追加(オプション)される装置と費用

追加で使用される矯正装置の有無など、患者さんごとの矯正治療の計画によって異なります。
患者さんごとの矯正治療内容により異なる部分を「装置料」や「トータルフィー」などに、どの程度まであらかじめ含めておくかという考え方もクリニックにより異なります。

抜歯の有無

矯正治療のために抜歯する場合には、抜歯も健康保険がきかず自費診療となります。(健康保険適用での矯正治療を除く)矯正歯科では抜歯をおこなっておらず、近くの一般歯科に抜歯依頼とされることも多いため、矯正治療費とは別途で費用がかかるのが一般的です。
自費診療での抜歯となるため、歯科医院により費用が異なり、地域によっても相場が異なりますので、抜歯をお願いする歯科医院に事前に問い合わせるとよいでしょう。

歯科矯正用アンカースクリュー

マイクロインプラント、インプラント矯正などの様々な名称でよばれています。
従来の矯正治療では難しいとされていタイプの歯の移動などおこなう際に、チタン合金性の小さな医療用のネジを併用することで矯正治療をおこないやすくするためのもので、ここ10年来、矯正治療の追加装置として一般的に用いられています。
しかし全ての患者さんに必要なものではないため、歯科矯正用アンカースクリューの併用が必要な患者さんに限り、費用をいただいて実施することが多いものとなっています。

その他歯列矯正の計画に応じて追加される様々な装置

そのほかにも、歯列矯正に先立ち「急速拡大装置」を使用する場合、顎関節や顎位のみきわめに「スプリント」を併用する場合など、患者さんの不正咬合の状況に合わせて様々な矯正装置を併用する場合があります。全ての患者さんに共通して必ず使用する矯正装置以外は、追加装置・追加費用にて適用するのが一般的です。
実際にどのような料金体系で追加装置を適用するかは、各矯正歯科の治療に対する手順や考え方、料金表により異なります。

関連して行う一般歯科治療

矯正治療と関連して、虫歯の治療や、ブリッジ・インプラントなど補綴治療を行う場合は別に費用がかかります。

矯正専門のクリニックは上下左右全体の歯列矯正が基本

矯正を専門とするクリニック(矯正歯科)では、根本的に、上下左右全体の矯正治療を考えるのが基本となっています。
理由としては、単純にデコボコを解消することだけが矯正治療ではなく、噛み合わせと歯並び全体の問題を解消するのが本来の矯正治療だからです。部分矯正の料金は矯正歯科のホームページなどに掲載されていないことが多いのは、患者さんが部分矯正を希望されたとしても、その患者さんにとって部分矯正が可能かどうか、適切かどうかがわからないから、ということも理由の一つになります。
矯正治療の費用としても、どの程度の範囲で部分矯正を行うか、たとえば上顎の前歯だけなのか、上下の前歯なのかなど、実際におこなう治療内容に合わせて矯正料金の計算が異なり複雑になることから、誤解を避けるためあえてホームページなどには掲載していないことも多いようです。

ホームページから読み取れる「自分の場合の矯正料金」と、実際に受診して見ないとわからないこと

矯正料金の内訳が理解できると、「自分の場合の矯正料金がどのくらいになりそうか」という見当がつけやすくなります。
それでも、実際に矯正歯科を受診してみないとわからないことも多々あり、料金を考える上でポイントとなるところを引き続きで考えて見ます。
「私の場合の歯列矯正はいくらですか?」という問い合わせ (2)」につづく

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