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大人・永久歯列の矯正 矯正治療全般 裏側・舌側矯正

裏側・舌側矯正:治療が始まるまでのながれ

2019年4月26日

歯の裏側にブラケット装置を装着して行う舌側矯正は、表側の装置での矯正治療といくつか事情が異なるり、表側にブラケット装置をつける矯正治療よりも治療を難しくするポイントが増えてしまうという特徴があります。

  • 歯の裏側は矯正医からも見えにくく処置をおこないにくい
  • 歯の裏側は、歯の形がとても複雑
  • 表側に矯正装置をつけたときと、歯の動き方の事情が異なり裏側の方が難しい...

このような治療を難しくするポイントをカバーするために、治療開始当初から様々な工夫が必要なので、療開始までのながれも表側の矯正装置の場合と異なってきます。

舌側矯正治療開始までの手順

初診相談

検査

診断

ここまではほかの矯正治療と同じです。
表側の矯正装置であればこの次は、ブラケット装置の装着となることが多いのですが、舌側矯正の場合はここから、それぞれの患者さんの治療にあわせた矯正装置の設計・製作を始めます。

舌側矯正装置を製作するための印象採得(歯列の歯型をとる)

検査の際に、治療計画を定めるために印象採得をおこない歯列模型を製作していますが、舌側矯正装置を製作するためには、さらに精度の高い歯列模型が必要となるため、この段階で再度、歯型(印象採得)をとります。この段階での精度が低いと、きちんと矯正装置をつくることができませんので、十分な精度の型が取れるまで印象採得をやり直すこともあります。

セットアップ模型(矯正治療後の歯並びを予測して作る歯列模型)を製作

検査時の分析結果なども利用して、矯正治療でどのような歯並び、噛み合わせにするか、最終的な矯正治療後の歯並びを予測した模型を製作します。「予測模型」「セットアップ模型」などといいます。
セットアップ模型は、歯列模型の歯をバラバラに切断し、矯正治療後を想定した歯並びに並べなおす作業で製作します。最近ではデジタルデータで作業をすることも増えています。
基本的には、セットアップ模型で製作した形に歯並びが治るように矯正装置が設計されるので、セットアップ模型がいい加減だとその後の矯正治療で歯並びがきちんと治りません。個々の患者さんに、現実的に最善は治療結果となるように考慮しながらセットアップ模型を製作します。

6. セットアップ模型上で矯正装置を設計、製作する

歯の裏側は、治療をおこなう矯正医からも見づらく作業がしにくい場所になります。そのため、表側の矯正装置のように目視しながら微調整を行うことが非常に難しいので、セットアップ模型上で歯に装着するブラケットの位置やアーチワイヤーの形状などをあらかじめ決定します。またせっかく精密に製作したブラケットを正確な位置に接着できなければ意味がないので、正確に矯正装置を装着するための「ボンディングトレー」という治具も製作します。ボンディングトレーを使用して矯正のブラケットを装着する方法を「インダイレクトボンディング」といいます

ボンディングトレーを用いて舌側矯正装置を装着する

ここまでの準備をおこなってはじめて、患者さんの歯に矯正装置の装着の準備ができます。
矯正装置製作に要する準備期間は6~8週程度です。
歯に対する矯正装置(ブラケット)を正確に位置決めするための「ボンディングトレー」を使用して矯正装置の装着をおこないます

  1. 歯の表面に汚れの膜があると装置の接着がうまくいかないので、最初にまずPMTCをします
  2. 同様に、歯石があれば除去します。PMTCやスケーリングの結果、歯ぐきからの出血がとまらないとやはり接着ができません。普段の歯磨きがうまくできていないと歯肉に慢性炎症があり、PMTCなどの際に出血してしまいますので、あらかじめ毎日しっかり歯磨きをしておく必要があります。
  3. 矯正装置の接着を補助するための歯の表面処理をおこないます
  4. 水分があると接着がうまくいかないので、口の中をほぼ完全に乾燥状態に保つ準備をします
  5. ボンディングトレーを使用してブラケットを歯の裏側に接着します。ここまでで40分〜50分程度の時間がかかります
  6. 接着剤の硬化をまちます。光を当てずに硬化を待つタイプで3~6分程度の待ち時間、光を照射して固めるタイプの接着剤で歯1本あたり10~20秒程度の光照射の時間が必要です。
  7. はみ出した余分の接着剤の除去などおこないます。接着剤の不足を防ぐためやや余剰するように接着剤を用いるのが一般的ですが、硬化後はみ出した接着剤を放置しないようにきちんと除去することも大切です。矯正装置の接着作業自体は終了していますが意外と時間のかかる大切な作業です。

上記の作業を終了後、歯磨きの方法や注意事項などの説明をおこなって終了となりますので、舌側矯正装置の装着日は長時間の診察となります。装着直後は不慣れなため違和感も強いので、直後に重要な用事をいれないなど、患者さんのご予定をしっかりとたてておいていただくことも大切です。

まとめ

歯の裏側にブラケットを装着しておこなう舌側矯正では、インダイレクトボンディングという方法で矯正装置を接着します。そのためにはセットアップモデルをまず製作して矯正装置の設計製作をおこなう必要などあり、1ヶ月半〜2ヶ月程度の期間を要します。
そのため、裏側で矯正治療をはじめたい!と思って矯正歯科を初診してから実際に矯正治療が始まるまで、3~4ヶ月ほどの時間があっという間に経ってしまいますので、患者さんも早めに初診の予約をとるなどの準備がベターです。
表側の矯正装置で矯正治療をする場合と比べて歯の裏側での舌側矯正は、治療をおこなう歯科医師からもみえづらく作業がしにくいだけでなく、歯の形も複雑なことなど、様々な治療を難しくする要因が重なっています。そのため、あらかじめセットアップ模型を作り、患者さんの歯並びが最終的にセットアップ模型のようになるように矯正装置も設計して製作するのが普通で、フリーハンドで矯正装置を接着することは通常はありません。
矯正装置を歯に接着する際に、歯の表面に汚れと水分があると接着できず矯正装置がとれて壊れてしまいます。普段からきちんと歯磨きができていないと、歯の表面に硬い膜状に汚れが固まっている状態になっていたり、歯石がついたりするだけでなく、歯肉に慢性炎症をおこしてPMTCや歯肉の除去の際に出血します。出血がすぐにとまらず乾燥できないと、これも矯正装置が接着できない原因になります。歯肉の腫れは、1〜2日歯磨きを頑張った程度では治りません。矯正装置の装着にむけて普段から、自分でしっかりと歯磨きをしておくことも大切です。

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