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子供の矯正 矯正の治療方針 矯正治療全般

タイプ別 子供の矯正・不正咬合の種類と治療方法(1)

2019年4月13日

子供の歯並びではどうしてもデコボコばかりに目がいきがちですが、不正咬合には様々な種類があり不正咬合に適した矯正治療とすることが大切です。歯の生え変わりをはじめとして、顎の骨の成長時期なども考慮して矯正治療方針を選択します。
永久歯列が完成し、歯列矯正が可能となる前の成長期に、準備的に矯正治療をしておくことで不正咬合をやわらげ、より良い矯正治療結果が得やすくなります。
反対咬合の場合には4~5歳〜、それ以外の不正咬合は上顎4前歯が永久歯になったころに矯正歯科にいちど相談するとよいでしょう。
前歯の噛み合わせの深さにかかわる不正咬合、過蓋咬合と開咬についてはこの後の【タイプ別 子供の矯正・不正咬合の種類と治療方法(2)】で、歯並びのでこぼこや空隙歯列など、歯列のスペースに関わる不正咬合については、この次の【タイプ別 子供の矯正・不正咬合の種類と治療方法(3)】で解説します。

横顔のバランスにかかわる不正咬合・前後的な問題

見た目も綺麗で格好よく噛み合わせも良いという歯並びは、デコボコなどがなく、なおかつ上下の前歯の角度が無理のない正常な範囲内で、上下歯列の位置関係のバランスも良い、歯並び噛み合わせになっています。「上下の前歯の角度が無理のない正常な範囲内」ということを考慮しながら治療のしかたを考えなければいけない点が、矯正治療が専門となりやすいポイントのひとつです。

上顎前突

上顎前突の原因には、
・上顎骨が大きい
・下顎骨が小さい
・上顎前歯が前方に傾斜、上顎歯列全体が前方
・下顎前歯が内側に傾斜
などがあります。
原因としてどれか単独のこともあれば複合していることもあります。

上顎骨が大きい場合

上顎骨が大きい場合は、ヘッドギアを使用して上顎骨自体の成長抑制を試みる場合があります。
またヘッドギアには、上顎の大臼歯を後方に移動させる効果もあるため、双方の狙いから用いられる場合もよくあります。

下顎骨が小さい場合

永久歯と乳歯が混在している時期では、着脱式の矯正装置を用いて、下顎の成長促進をおこないます。
その際に、下顎前歯が前方に傾斜しないように気をつけながら行うのがコツになるので、その点も配慮して矯正装置を選択します。
・バイトジャンピングアプライアンス
・バイオネーター
・FKO(アクチバトール)...など
着脱式の装置は使用時間が少ないと効果が得られないので、毎日、できるだけ長い時間使う必要があります。逆に食事や歯磨きなどの際には必ず外します。
乳歯がすべて永久歯となり、上下全体にマルチブラケット装置が装着できる時期以降(概ね中学1年生〜)の場合は同様の効果を狙った固定式の矯正装置を用いることもよくあります。
・ハーブストの装置
・アドバンシンク...など

上顎前歯が前方に出ている、傾斜している

乳歯と永久歯が混在している小学生ぐらいの時期では、永久歯部分のみ(第一大臼歯と前歯4本など)にマルチブラケット装置を装着する「セクショナルアーチ」とヘッドギアとを併用するなどの方法があります。
しかし根本的に前歯を後方に下げるにはそのためのスペースが必要で、多くの場合「永久歯列になってから小臼歯を抜歯して、そのスペースを利用して前歯を後方に下げる」という治療を要します。
つまり、上顎の前歯が原因で出っ歯の場合には、最終的には、永久歯列期に抜歯をともなう歯列矯正を行うまでは根本的には解決ができない場合がほとんどです。

下顎前歯が内側に傾斜している

下顎前歯が内側に傾斜しているために出っ歯になっている場合、
・何かしらの矯正装置を使用して下顎前歯を前方に傾斜させる
・下唇を咬むなどの癖が原因になっている場合、癖をなくす、除去する
などの方針となります。
下顎前歯の前方への傾斜が可能な矯正装置として、
・バイトプレート(咬合挙上板)
・ジャンピングプレート(咬合斜面板)
・セクショナルアーチ
・リップバンパー(下唇を咬む癖も排除できる)...
などがあります。

下顎前突(反対咬合・切端咬合・受け口傾向)

下顎前突・反対咬合も、顔面骨格のバランスによるものか、歯の生え方によるものかで矯正治療の考え方は大きく異なります。ただし、子供時代の反対咬合をそのまま放置すると、成長発育期に、より下顎前突に成長してしまうリスクが高いので、早期に反対咬合は解消するなど、早いうちからの対応が大切です。
反対咬合については、簡単な着脱式の矯正装置が使用可能な年齢(概ね4歳〜)になったら、いちど矯正歯科に相談されるとよいでしょう。

4歳〜6歳ごろの反対咬合

この時期に前歯が反対咬合になっている場合は、まずは一度、反対咬合を解消しておくことが大切です。
その後の成長発育であらためて下顎前突傾向で成長していく可能性はなくなりはしませんが、反対咬合のまま放置するよりは、そのリスクを軽減できます。
当初から上顎骨が著しく小さい場合などは4歳ごろから上顎前方牽引装置を使う場合もありますが、歯並びの型をとる必要があるなど、4歳児には多少敷居が高い場合もありますので、まずは事前準備の必要の少ない「ムーシールド」など、簡易で効果の見込める着脱式の装置から始めることが増えています。

10歳まで、上顎骨が小さい場合

上顎骨(上あごの骨)の成長発育は10歳ごろで終了します。
そのため、上顎骨の成長促進を行う場合も10歳をすぎると効果が見込めなくなるので、治療効果が見込める成長発育段階のうちに治療をはじめることが重要です。
上顎骨の成長促進は「毎日できるだけ長時間、上顎骨に前方に引っ張る力をかける」という方法で行います。上顎骨を前方に引っ張る土台となる矯正装置が必要なので牽引をおこなう際には、「フェイシャルマスク」「フェイスクリブ」などという名称の「お面」のようなものから上顎歯列を牽引します。

下顎骨が大きい場合

以前は下顎骨の成長を抑制するために、「チンキャップ」という名称の、頭部からオトガイ(顎の先端)を後方に牽引して顎を抑える装置を使用しました。しかしチンキャップを使用しても本質的には下顎骨を成長抑制できないことが明らかになり、ほかの効果が弊害となる場合もあることから近年ではチンキャップはほとんど使用されなくなりました。
身長が伸びている間は下顎骨も成長し続けるので、成長終了後に、上下顎骨の骨格的な位置関係が著しくずれていれば外科矯正をおこなう前提で、下顎骨の成長は経過観察とするのが一般的です。

永久歯の前歯の生え方、角度が原因で全体的に反対咬合になっている場合

上下顎骨の骨格的なバランスに問題がなく、歯の問題で反対咬合となっている場合も、まずはできるだけ早く反対咬合を解消した方が良いので、永久歯の生えている本数、残っている乳歯、成長発育段階など考慮して矯正装置を選択し、上顎前歯の前方への傾斜などをおこないます。
・セクショナルアーチ
・弾線付きリンガルアーチ
・弾線付きバイトプレート
・ムーシールド
・反対咬合用アクチバトール
などから状況に応じて矯正装置を選択します。
永久歯と乳歯が混在している時期の矯正治療では下顎前歯を内側に傾斜させることが難しいので、反対咬合を解消するには上顎前歯を前方に傾斜させる方針が一般的となります。上顎前歯を傾斜させるにも限界があり、とくに、反対咬合の原因に骨格的要因が強い場合は歯での対応だけでは不十分になりますので、きちんと原因を見極めた治療のしかたが重要です。

まとめ

上顎前突(出っ歯)、下顎前突(受け口、反対咬合)の両方とも、不正咬合の原因が骨格のバランスにあるのか、歯の生え方にあるのかをきちんと診断して、治療方法を選択することが重要です。
こどもの成長発育段階によっても選択する方法や矯正装置は異なってきます。
また、子供の時期、小学生ごろの矯正治療だけで最終的なゴールまで完結できることは少なく、永久歯列までトータルで予測・考慮して矯正治療を計画することが重要です。

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